IT系スタートアップの新規サービスやアプリが失敗する王道パターン〜PDCAのお話〜

PDCAサイクル図

IT系のベンチャーの新規サービスの立ち上げや、新規ウェブサービス、新アプリの開発など、とても刺激的でエキサイティングな環境にいる方は多いと思います。

夢と希望に満ちて新しい事にチャレンジし、または自分の可能性を信じて、突き進む姿というのはとても素晴らしいですよね。

私も今まで、いくつかの環境で新規サービスの立ち上げや、独自企画のサイト立ち上げ、アプリのUI開発などに携わり、今でもスタートアップのアプリ開発案件や新規サービスの立ち上げなどにアサインしていますし、回りにも刺激的なスタートアップの方達がいます。

しかし、夢ばっかり楽しいばっかりではありません。チャレンジにはリスクが伴い、たとえ人並みならぬ情熱を持って死ぬほど頑張ったとしても、必ず成功するとは限らないのもビジネスです。

私も過去にうまくいかなかった経験などもあった訳ですが、ちょっと前に、スクーというWeb上の授業サービスで、クラウドワークス代表の吉田 浩一郎さんの講義「8ヶ月で会員1万人と、総額8億円を集めたUX改善」を聞いていて、とても共感出来たお話があったので、ご紹介したいと思います。

まず前提。UXとは

UX(ユーザーエクスペリエンス)=ホームページ上で、ユーザーさんに、ホームページを通じてどのような体験を提供するのか、という事で、そのUXを追求しまくっているのが、クラウドワークスさんです。

「1クリックで世界の仕事とスキルにアクセスを」 という理念の元、お仕事を出す人と、お仕事を受けたい人が、快適にお仕事のやりとりが出来るという体験をめちゃくちゃ追求しています。

このユーザーエクスペリエンスというのは、最近良くウェブ業界の中で言われている事で、他のサイトの例を上げると、クックパッドであれば「毎日の料理を楽しくする」という体験を、レシピを通じて提供するのが、クックパッドのサイトのユーザーエクスペリエンスという事になります。

アマゾンであれば、ユーザーの買い物体験をいかに気持よく提供出来るか、という事になります。ウェブだけじゃなく、アプリでも、そのアプリが提供するユーザーエクスペリエンスというのが追求されている時代です。

ユーザーエクスペリエンスの向上ができると、ユーザーさんがサービスを快適に使って頂ける事になり、サービスとしての利益にも直結する事が最近わかってきているので、みなさん力を入れて、ユーザーエクスペリエンスの向上に取り組んでいます。

それでは本題。

PDCAのどこが1番コストがかかるか

そのユーザーエクスペリエンスの向上が、サイトの成果にも直結する訳なのですが、多くのスタートアップが失敗する、もしくはうまく立ち上がらない、王道のパターンをUX改善のPDCAという観点からクラウドワークスの吉田さんがご紹介されていました。

クラウドワークスさんのUX改善からサービス収益向上のアプローチは、とてもシンプルです。ユーザーの分析を進め、サービスの収益向上における「KPI(key performance indicator=実益に繋がる重要な改善ポイント)」を1000パターンほどに絞りこみ、実際にサイトを触って使いにくいと感じた所、気になる所などをチケット化し、ひたすら改善しKPIの計測をしているとの事でした。

Checkのコストと重要性を良く理解しているからこそ、付随する機能を最低限に抑え、コアバリューのみに絞る事で、計測ポイントを最小限にし(それでも1000もある!)、PDCAを加速させる事で会員数も増え、取り引き金額も伸びています。

ちなみにPDCAとは、、

P=Plan 計画
D=Do 実行
C=Check 検証
A=Action 改善施策

PDCAサイクルという事で(ピーディーシーエー – 、PDCA cycle、plan-do-check-act cycle)は、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つを言います。

Plan=計画や、計画した内容を構築するDo=実行工程というのは、夢も膨らみ希望に満ちてテンションを上げて出来てしまいます。そこには資金や労力をかけるモチベーションが高いケースが圧倒的ですが、実は上記の中で、1番コストがかかるのは、実は「C=Check 検証」になります。

PDCAのコスト構造

PDCAのコスト構造

図の中の左が、機能が1つだった場合、右が、機能が2つだった場合のPDCAのコスト構造を表しています。

 

実際にユーザーさんに使ってもらった膨大なデータに対して、何を基準にして、どこを改善したらどう実益に結びつくのか「KPI(key performance indicator=実益に繋がる重要な改善ポイント)」を見極め、一つ一つのデータを地道に改善していく作業で人も必要ですし、時間もかかります。

アナリティクスなどの定量的なユーザーのデータだけを見て、使いにくさの要因の仮説を立てて、そのポイントを実際に自分たちで確かめて定性的な仮説と照らし合わせて、UX改善をし、KPI向上を計測して、実益を計測する。そのような工程は、どうしても人の手がかかり、それも結構な労力がかかります。
そして、作り上げる課程のモチベーションとはまた違った気力が必要になり、地味で根気のいる作業でもあります。

気合ではなんともならない

それらのCheckの作業のリソースが割けないパターンが圧倒的に多いのがスタートアップです。

お金の無いスタートアップは「P=Plan 計画」と「D=Do 実行」だけにフォーカスしてしまって、その後が息切れしてしまったり、そもそも「C=Check 検証」と「A=Action 改善施策」は予算を組んでなかったり、気合でなんとかなる、というような、何も考えてないケースが多かったりします。

しかし、ここが大きな罠で、意気揚々とサービスを公開出来たら、次に待っているのは、サービス運用の取り回しやユーザーのサポートなどが始まります。ただでさえ人手や資金が限られるスタートアップでは、それらの運用もギリギリで回す事が多かったりします。

それで、サービスの向上に本当に大切なユーザーエクスペリエンスの向上の「C=Check 検証」の活動は、どんどん後回しになってしまうか、もしくは全く取り掛かれないパターンでどんどん疲弊していきます。

つまり、「P=Plan 計画」や「D=Do 実行」で燃え尽きてしまうパターンが多いのです。

これは、簡単に例えるなら、登山をする際に、山頂を目指し登りはじめたはいいが、山の状態や途中の天候のコンディション、自分たちの体調など登山の経過の考慮をせず、思ったより険しい事に気づいた時には、既に息切れしてしまって迷い、下山のルートさえもわからず遭難してしまうようなものです。

ウェブサイトやサービスというのは、出来た後にユーザーに使ってもらって、喜んでもらう事が本来の目的であり、サービスが続く限りは、構築期間よりも構築した後の期間の方が長い訳ですし、そうなるように目指すべきなのです。なのに、スタートを切った後、一直線に登れると思っていたりして、どう山を登るかといった「C=Check 検証」や「A=Action 改善施策」の具体的な考慮がされない場合が多いのですね。

計測ポイントが増えると、コストもリスクも大きくなる

スタートアップはコアのバリューに絞って、最小限でスタートしろ、的な事は良く言われるのですが、PDCAの視点から見ると、それは理にかなっています。

何故なら、最初からあれもこれもと夢の膨らみと比例して様々な機能や付加サービスをトッピングしてしまうと、Checkポイントも比例して増えてしまいます。

二つの機能を付ければ、Check以降の工程が2倍に増える、と考えてしまいがちですが、Check以降のA→P→Dのサイクルをどんどん回す中で、一つの機能には多数のKPIが存在する事を考えると2の3乗にも4乗にも増えます。

そして、KPIの見極め、実益の計測といったPDCAをループさせる負荷は、想像を遥かに超えてより複雑になり、計測ポイントも効果測定もぼやけてしまいます。最悪なのは、うまくいかない原因がぼやけ過ぎてしまい、「いっぺんにやり過ぎた」といったような総論に留まってしまい、何が悪かったのかすら曖昧な結論になってしまう事です。要因さえ掴めないので、改善のしようが無いのですね。

スタートアップ時は、成功させたいという気持ちが強く、価値を高めたいという欲求が出てしまい、機能を減らす事がとても怖く感じます。ただし、その気持ちこそコストとリスクを増やしているという事を忘れてはいけません。

一つの機能を追加する事に対する、Check以降のコストとリスクは、想像以上に大きくなる事を考えると、機能を追加する事は機能を減らす恐怖以上の覚悟が必要になります。

コーラを売るか、コーラとコーヒーを同時に売るか

クラウドワークスの吉田さんがとてもわかりやすい例えとして、「コーラだけを売るか、それともコーラとコーヒーを同時に売るか」という事をおっしゃっていましたが、もし「コーラを売りたい」という考えでスタートしているなら、コーヒーには手を出さず、まずはコーラを売る事だけに集中すべきです。そして、コーラを売る事が成功してから、コーヒーの事を考える方が良いでしょう。

「二兎を追うものは一兎をも得ず」これは真理です。

最後に

私もこれまでの経験の中でうまくいかなかった事があり、それはそれで本当に貴重な経験をさせて頂いたのですが、まさにこのポイントがネックだったと痛感しています。それから情報設計やWeb解析などの手法の必要性を痛感して学びました。

これから新規サービスやアプリを世に出そうと目論んでいる方々には、ぜひユーザーエクスペリエンスの重要性と、その改善手法としてのPDCAサイクルを意識して頂きたいと思います。そして、PDCAのコストを考慮したビジネスモデル全体の設計をきっちりと行う事が重要です。

今回は「スタートアップ」というくくりで書きましたが、スタートアップだけではなく、一般的なウェブサイトやリアルのサービスでも同じ事が言えます。

そして現在、色々なプロジェクトにアサインさせて頂く中で、そういった面でもプロジェクトを支えて貢献出来ればと思っています。

UX改善やWeb解析、PDCAの導入や、新規サイト立ち上げなど、お力になれる事があればぜひお気軽にお声かけください。

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