首相官邸ホームページのリニューアル構築費用に対して製作者側からの考察

Web制作

首相官邸の公式ホームページが2012年4月2日、リニューアルされた。

これが「お金をかけすぎている」とインターネット上で批判の嵐となっている。増税や公務員削減などが実施されようとしている中、無駄使いではないかという声が多くあがっているのだ。

首相官邸HP、リニューアルに4500万円 ネットで怒りの声 「もっと安くできる」 – J-CASTニュース

この記事ですが、ネット上での「高い」という声は一般消費者感覚としては理解出来ますが、Web業界で働く私の周囲のリアルな同業者からも、ネット上の一般の方と同じように「高い」「騙されてる」「金のムダ使い」というような意見が出まして、ちょっと違和感を覚えました。

また一方で、同業の方でも実際このクラスの規模の案件を受託しているような受託業者さん界隈からは「これくらいはかかる」「この金額以下だと受けられない」という声も聞かれました。

私は後者の声に同感ですが、前者のような感覚を抱く方が何故このような感じ方になるのかと考えた時、こういう規模の案件をリアルに感じられない事が要因なのかな?と思い、第三者ですが製作者の視点から私の知る限りのケースを公開する事で実情を知ってもらい、ではどうしたら良いのか?と考えてもらるきっかけになればと思いエントリーを書きました。

そして、公共の案件を受注する業者は「あくどい」とか、「下請け孫受けで中間マージンだけ抜きやがって」とか、そういうネガティブなイメージを持たれるのも本意ではありません。中には搾取的な勘違いゼネコン糞野郎もいると思いますが、下請け孫受けに出す所でも苦しい中で技術的なパートナーシップを組んで頑張っている所がほどんとです。泣きを見る事もあるでしょうけどみんな持ちつ持たれつやってると思いますし、大手もかなり厳しい中で悪戦苦闘しているイメージです。

私がこの記事で伝えたい事は3つです。

  • 実際この位かかるのは妥当
  • 求められる品質を見直すプロセスが必要
  • 工夫出来る所はある、という視点に立つために

という3点です。

1.実際この位かかるのは妥当

どこまでの仕様を求められ、どのくらいの期間のプロジェクトにもよります、という前提付きですが、率直に言ってこの規模の国の案件はこのくらいかかります。なんでそんなにかかるのか、というのを超超概要で説明してみます。

公共案件は、基本的にプロポーザル(入札形式)です。発注者が求める要件をまとめた膨大なページ数の仕様書(要件定義依頼書/RFP)と共に、入札条件や入札日などが公示され、公示から定められた期間内(だいたい公示されてから1ヶ月程度)に、提案書をまとめ、プレゼンをし、金額を含めた総合評価の元に一番成績の良かった業者さんが落札します。

今やITやWeb業界も不況の煽りを喰らっていますので、どの業者も苦しい状況です。国の案件などは予算規模も大きく、百戦錬磨の大手SIが虎視眈々と狙う絶好の狩場です。そんな弱肉強食、群雄割拠の中で繰り広げられる入札案件ですから、金額もかなり下げてきます。実際赤字になる事も珍しくありません。ちょっと想定外の事が起こると予算をあっという間に超えてしまう、それくらいのギリギリの所でみんな入札してきます。(想定外が起こらない案件は無いでしょうし、、。)

そういった事情を踏まえ、提案時に検討が必要な項目を以下にざっと書きます。構築ではなく、あくまで提案時ね。

  1. デザイン
  2. 情報設計
  3. アクセシビリティ
  4. コンテンツ移行
  5. インフラ(SLA、セキュリティ、ハードウェア構成)
  6. デモ構築
  7. ドキュメント作成内容
  8. テスト作業内容
  9. 見積もり
  10. 提案書作成

デザイン

提案時には、デザイン案も複数パターン求められる事も普通で、デザイン案を提出する、という事は、デザインの背景にある情報設計もかなりの精度で終わってなければいけません。要はほとんど構築と変わらないような作業が必要です。

情報設計

前記の通り、デザイン案を提出するという事は、第一階層、第二回層、第三階層などのテンプレートの設計や、ローカルナビゲーションやメニューの配置など、サイト全体の情報設計が必要で、ほとんど構築時のレベルの全体設計が必要になります。

アクセシビリティ

首相官邸ですので、国内では最高レベルのアクセリビリティを求められるはずです。公共系の案件で用いられるアクセシビリティの基準の一つとして『Webアクセシビリティの新規格「JIS X 8341-3:2010」』というものがあります。そして、その達成基準はA~AAA位は求められると思います。

参考資料:JIS X 8341-3:2010 解説 – ウェブアクセシビリティ基盤委員会

アクセシビリティの達成基準の実現を目指す時、犠牲になるのが「デザイン性」です。この基準では、視覚的、聴覚的な障碍を持つ方や、高齢者の方など幅広くホームページの操作を可能にする為、デザインや構造、仕掛けなど様々な制限を設けています。色のコントラストとか、配色の内容、ナビゲーションの構成やhtml文書の記述の仕方までかなり細かいです。
なので、「デザインしょぼ!」というのもごもっともだし、実際にもっと安く、良いデザインを提案出来る人もたくさんいるはずです。

ですが、「アクセシビリティの達成」と、「達成したかどうかを判定するためのテスト」、そしてその「テスト内容を担保する為の膨大なドキュメントの作成」が求められます。その経緯の中で、デザインを優先するであるとか、機能面で優先項目が出た場合に、アクセシビリティとトレードオフした項目があった場合は、達成出来ない項目の代替案を検討し、運用方法をコンサルテーション、提案し達成基準同等まで落としこむ為のストーリーが求められます。システム的、もしくは手運用レベルで達成出来る事を担保しないといけませんから、ごまかすこともできません。そうなって来るとどうでしょうか?途端にハードルが上がりますよね。

コンテンツ移行

コンテンツ移行についても、仮に5000ページ移行する必要がある場合、1ページ単価を500円と設定すると(あくまで仮の金額ですが、現実的には500円とかじゃまず無理)、それだけでも250万円になります。国系の案件だと、移行コンテンツ5000ページとか普通です。※ちなみに、Wgetを走らせてwww.kantei.go.jpドメイン内の全ページ数の解析を試みましたが、解析率18%で既に1500ページを超え挫折orz…

これらをプログラム組んで全てガチャっと移行可能なのか、それとも人の手を入れ、手動&目視しないと移行出来ないのか、という所を含めて検討して見積もりを作成します。コンテンツ移行の絶対数が多いので提案期間内に全ページ検討なんてまず無理です。単価を見誤ると大惨事。

インフラ

インフラ(サーバーやバックアップ装置、ファイアーウォールやルーターなどのハード)も全て検討しないといけません。首相官邸のホームページですから、SLA(サービスレベルアグリーメント)も国内最強レベルで求められるでしょう。
稼働率99.9%~100%、バックアップの冗長化や、自然災害時の為の物理的な冗長化。安定して稼働する為のスペックを満たし、何かあれば即人員投入出来る体制を整えなければいけないでしょう。海外からのアタックもあるでしょうから堅甲なセキュリティも必要です。この保守費用だけ見ても年で数百万になるでしょうね。

デモ構築

プレゼン時には、ある程度本番環境がイメージ出来るデモを構築しないといけません。という事は、提案時に既に構築が始まっているのです。
あと、CMS費用も必要ですね。今回のCMSは何を使われてるのかわかりませんが、世界規模で一般的なCMSであるMovableTypeで考えた場合、サイトの規模的にAdvancedとなると思いますが、それがイニシャルで189万円です。他にも、モノによってはライセンスだけで500万だったり1000万だったりします。

ドキュメント作成

一般的に求められるドキュメントは以下のようなものです。
・要件定義・仕様書
・基本設計書
・詳細設計書
・運用マニュアル(複数種類)
・ホームページ操作手順書
・テスト仕様書(単体・結合・総合・例外・アクセシビリティなど)
・テスト報告書(単体・結合・総合・例外・アクセシビリティなど)
などが挙げられます。他にも案件によってもっと増える事もあると思いますが最低このくらいは必要です。

テスト作業内容

案件を進める上で、何を持って正常に構築出来たかを判断する為のテストです。仕様書を元に要求された機能が満たされているか、何を持って満たされたと判断するのか、細かくテストを行い、ドキュメントに残しますので、その内容も検討しないといけません。提案時に細かく説明する事は求められないかもしれませんが、何をテストするのか?という事位は提案時に求められると思います。

見積もり

今までに検討した項目も含め、CMS開発等の構築費用がかかります。仮に1ヶ月20日計算で3ヶ月で開発に要したとしましょう。何人で開発しましょう?3人で開発したとします。1人日5万円の単価だと、1ヶ月100万×3ヶ月×3人なので900万円です。それ以外にもマニュアルやらドキュメントやらも作成しなければいけませんので、さらに人員が必要ですね。進行管理にはディレクターやプロジェクトマネージャーやらも必要です。導入前の操作研修や講師も必要ですね・・・

というように構築から納品までに関わる全ての費用をここで検討し算出します。見えない要件なども考慮し綱渡りさながらの中、見積だけでもかなりの労力を伴います。他社の動向なども意識しつつギリギリの金額を設定します。

基本的に、実際に入札で業者選定された場合は、何があろうがその金額に収めないと行けないため、かなりの慎重に金額を算出しないといけませんし、中には赤字覚悟で実績を作りたい、という業者もいますので、そういうレベルで考慮しつつ入札金額を算出します。なので、ぼったくり、とかムダ使いだとかといった余裕のある状況でない事は確かです。

提案書作成

上記内容を踏まえ、最終的には50ページとかのプレゼン資料を作成しプレゼンをします。


これまで見て頂いて、入札の時点で、何人位のプロフェッショナルが、何日位稼働しないといけないか、また実際の構築ではどれ位費用がかかりそうか想像できるでしょうか?

そして、入札までの上記の作業は、全て構築費には含まれません。自腹で動かなくてはいけないのです。

これは予想ですが、4500万というのは、単に構築費だけじゃなくて、5年とかの運用費含む構築費用全体の予算だと思われます。単純に5年で割ると年間900万程度です。※入札要件の公示情報とかを探したのですが見つからず。。RFPがあればぜひ見てみたいですねぇ。。

「桁が間違ってる」と言われるそこのあなた、さぁこの案件、5年契約で450万で入札してみてください。あなたなら出来るかもしれません。ただ、普通に考えると単純に人件費だけで見ても採算取れそうもありません。

受注した場合の構築費用概算をなんとなくザックリ立ててみた

<前提>

  •  前提として一律1人日5万、20日稼働の1人月100万。
  • コンテンツ移行は、5000ページで、500円〜1000円の間を取って750円単価。この金額もかなり適当。
  • めんどくさい所はとりあえず一式で算出
  • 5年契約
  • 細かい仕様はあんまり見てない(動画とか考慮してないからその部分は単純に追加になるイメージ)

<構築までの見積もりイメージ>

情報設計1,000,0001人月
デザイン2,000,0002人月
html一式1,000,0001人月
アクセシビリティ3,000,000一式
コンテンツ移行3,750,000750円×5000ページ
インフラ初年度2,000,000 
次年度以降44,000,000年100万×4年 月8.3万 必要最低限レベル
テスト作業2,000,000一式
プロジェクト管理3,000,0003人月
CMSライセンス2,800,000イニシャル200万+1年20万継続ライセンスを4年
ドキュメント作成2,000,000一式
CMS構築9,000,0009人月
スマホ・モバイル対応   2,000,000 2人月
教育研修1,000,000 ドキュメント含め1人月
保守対応4,000,000月8.3万×4年 必要最低限レベル 常駐なし
 
 合計42,550,000 

 こんな感じです。かなりいい加減で大雑把もいい所ですが、求められるであろう要件を全部満たし魅力的な提案にする事を考えると遠からずな感じだと思います。

上記のような内容をリアルに想像出来る業者さんとかであれば、今回の4500万という金額が、妥当なラインでこれ以下の金額では厳しい、というのが実感として自然に出てくると思います。※公共案件ってWeb業界でも特異な部類なので、一般的なWeb業界に携わる人でもリアルに想像出来ないのも無理もありません。

このネット記事の渋谷の業者さんが「高くて2000万」と言ってますが、2000万でもかなり厳しく、契約後に「あれは出来ない、これはできない」と、やるやる詐欺レベルで無理やり丸め込んで炎上するパターンか、「高い」というネット世論の結論ありきで安く見積もった適当な金額ではないかと感じます。それで出来るなら実際その金額で入札してもらいたいもんですが、、、実際その業者はしなかったという事はどういう事か、想像すればわかりますよね?

今回の案件の具体的な内容は知りえませんが、私の感覚では超おおざっぱに括ると「妥当」な範囲にくくられる金額です。妥当どころか安すぎですね。

2.求められる品質を見直すプロセスが必要

それでもやっぱり「4500万は高い」という声、それもわかります。
普通の感覚で、今やホームページビルダーでおじいちゃんでもホームページが出来る時代です。無料でホームページを構築するサービスもたくさんある。そんなご時世にホームページに4500万円と聞くと、感覚的には「高いだろ」「首相官邸がリニューアル出来るわ」という声も理解出来ます。

1では、製作者目線での金額の妥当性を訴えましたが、2で言いたい事は、「発注者の求める基準が過剰ではないか?」というお話です。

“何も気にしなければ”45万とかはさすがに無理ですが4500万円の半分の予算、もしくは数百万で構築出来るかもしれません。

単に構築だけなら良いのですが、それに伴うドキュメントの提出であったり、品質を担保する為のテスト、それが正常に終わった事(つまり、テストで異常ありませんでしたという証拠)を保証する為のドキュメントの提出だったり、それに付随した作業が膨大なのです。要は、本質でない部分のコストが膨大だ、という事です。そういう意味で”何も気にしなければ”という事です。

サービスレベルの品質基準一つ取っても、かなり高いでしょう。例えば個人ホームページを作成する感覚で、サーバーも滅多に落ちないしロリポップでいいじゃんとか、安いクラウドとか使えばもっと安くなるという話になりますが、国家を挙げてのWebサービスとなると、そうは行きません。

サーバーで言うと、「絶対に落ちない」と、「ごくまれに落ちるかもしれないけど、ほとんど落ちないからそれで良いよ」では、それを満たす為の費用を考える場合、その僅かな違いが雲泥の差の金額になります。

構築のレベルも、そのプロセスも、納品する成果物も、過剰なまでの品質と、それを満たした事を示す為の証拠を求めます。万が一、求めた品質を満たしていないような不具合が発生した時の責任を受注者に被らせる為に、国も必死なんですね。そして優秀な受注者は、そうならない為に万全に構築しますので、その過剰な品質に応えるため費用がどんどん膨らみます。それらの作業が全て無駄だと言いたい訳ではないですが、「本当にこの品質が国民にとって必要なのか」という事や、「過剰なまでの品質を満たす為に、本質以外の所で膨大な費用がかかっているのではないか?」とういことです。

膨大なコストをかけた仕様書やテスト報告書などは、問題が発生ない限り見られる事はないでしょう。検品時に検品担当がさーっと目を通して誤字脱字など指摘する事はあっても、検品されればそれで終了です。納品される事が目的なのです。マニュアルやガイドラインは活用されると思いますが、膨大な仕様書や設計書などは基本的には倉庫やキャビネットに眠る事になるでしょう。読みきれない量の情報を求めて、それを作成し、誰も見ない。もう、人間が扱える範疇を超えたやりとりがそこにある訳です。扱えないが完璧を担保する為に膨大な付随作業が発生し、完璧に完遂する事を求められ、完璧にこなす。

公共案件やこの規模以上の案件を受注して制作している業者さんの中の人であれば、この感覚に共感出来る人は多いんじゃないかと思います。少なくとも私はそう思っています。

併せて、「Webサービスを支える細やかな技術は明らかに目に見えない」、という点も考慮したいです。例えば宇宙に行く為の技術や、スパコンで世界一の性能を目指す、という予算であれば、明らかに目に見える成果があり、誰の目にも明らかなのでわかりやすいですよね。それに文句を言う人はいるかもしれませんが、「宇宙に行くための費用」や、「世界一の性能を目指す為の費用」というくくりで予算感を明示する事は可能です。そして、それは見方によって成果が変わる訳ではありません。

Webの技術はそれらのように目に見えて万人に分かりやすいという訳ではなく、同じ仕様でも人によって感じ方も違うし、手にとって見ることも出来ない。365日24時間サーバーが稼働する為の費用や、アクセスが集中した時にも耐えられる費用であったり、過剰かどうかは置いておき、日本の技術として高品質なWeb技術を培う為の費用、最高レベルのサービスを提供する為の費用というと、とたんに目に見えなくなります。一般的な消費者目線で、誰の目にも明らかな成果が手に取るように見える訳でもないし、スパコンのように単純に性能を数値化出来るものでもない。

逆に、たまに落ちたり、遅かったりすると、それこそ怒号のように叩かれまくる事は必死です。国のサービスとして、国民が普通に使うためにどれだけの費用が必要なのか、というのが普通に使えて当たり前になっているからこそ一般的にわかりにい。

だからこそ、どのレベルのものを提供するためには、これくらの技術が必要で、これだけの費用が必要だ、という事を理解してもらう為の努力も必要だと思います。それは国としても努力するべき部分であり、製作者側もその努力は必要だと思っています。

ネット上の感想を見て一番共感を受けたのが、「受注金額の内容を公表して透明化してほしい」という声でした。これが出来れば少なくともネット上の怒りの大部分は、ある一定の納得感に変わるのかな?と感じました。

そうする事ではじめてどの位の品質が妥当なのかという検討が可能になるのかなと思います。そのように、制作に関わる金額を公開し、サービスを受ける側のユーザー(国民)が妥当かどうか検討し、その声を反映する構築プロセスが今後必要になってくるんではないでしょうか。国のサービスとして費用対効果が最も妥当だと思われるラインを見極めるプロセスが入らないから、閉ざされた一部の人(しかもほとんど手探り)で品質が検討され、その多くは、過去の品質からの単なる上積みのみとなり、雪だるま式に求められる品質が膨れ上がる。

そして、一見平等で民主的に見えるプロポーザル制度によって入札されるが、実際は誰の意見も反映していない非民主的な制度だと揶揄されてしまい、単純に金額だけ切り取られ「高い」「ムダに費用かけすぎ」という印象を抱かせてしまうのではないかと思います。

品質が高い事、値段が高い事、それのみを切り取って問題だという事ではなく、妥当な品質を判断するプロセスを経ていない、国民の判断の余地が無い、選択肢がなく搾取的な構造というのが問題だという事を言いたいのです。必要とされていない品質であれば無駄だし、過剰な品質が独り歩きしているんじゃないか?という事です。

3.工夫出来る所はある、という視点に立つために

そして、3ですが、2で言ったような「国民視点での妥当な品質の見極めプロセス」が実際の構築案件の中で実現できれば、もっと工夫出来る所があるんじゃない?という考えに立つ事が出来ます。

単純に安く済まそうと思えばいくらでも安く出来るでしょう。中には、「国の為ならタダでやっても良い」という人もいるかもしれません。ただし、それ相応のサービスや品質が求められる上で、どこが妥当なのかを見極める必要はありますよね。ロリポップとWordPressで、個人ホームページレベルのサービスで良いか、というと、それは違うよねという事です。

今までのMade in Japanがそうであったように、首相官邸のホームページも「愚直なまでに高品質」である所は否めない感はあります。そしてそのために「どれだけのコストと犠牲を払っているのか国民の誰も知らない」という事が問題で、どこまでが妥当なのか見極めて、安く済ませそうな所は安くしようよ、という事です。単純に金額だけ下げれば良いという事ではなく、国のサービスとしての質を、ユーザー(国民)目線で見直すプロセスを公共案件にもそろそろ標準化しても良いのかなぁなんて思いました。

もちろん選択として、高品質に過剰に過剰を重ねて求められ作り続ける、そういう選択肢があっても良いと思います。ただインドや中国のIT技術の台頭プラス安い人件費という高回転なエンジンをブンブンふかし続けるアジアのIT情勢の中で、今の日本のIT業界、Web業界は勝負出来るのか、これからの日本にとってどういう選択が迫られているかという視点から熟考する必要があるんじゃないでしょうか。そういう時期に来てるんじゃないの?という感じ。そこに立つ為に出来る事からやっていこうよと。

で?
DE?

どうするの?という話ですが、やっぱり、受注業者の公表や、金額の内訳の透明化という所からやってみたらいいんじゃないでしょうか。
その他、良いアイディアがあれば、そして機会があればですが、自分でも提案、実践していきたいと思います^^まぁ出来る範囲でがんばります。

最後に

これは所感ですが、リニューアルされた首相官邸のホームページを見ると、パッと見デザイン性が低かったり、ダサかったり、構造が糞だったり、と個々の感想はあると思いますが、私からすると(文字化けや誤字脱字といった基本的な問題は問題外として差し置いて)膨大なコンテンツをうまく整理し公共性の高い高品質なサイトに見えます。

どんなに完璧なサイトにも必ず叩きどころはありますが、ターゲットに対しサービスの目的が果たせているか、という点においては、デザインやコンテンツ、構造、サービスレベルなど高いレベルで実現できていると思います。また、公共性が高ければ高いほど、表面的なデザインより重視されるものがあって、そういうの含めて表現されるのもデザインだという事かな。アメリカの政府系サイトなんかは、テキスト中心ですが、タイポグラフィでバシっと決まってて格式も高くカッコイイですよね。(タイポグラフィについては、2バイト文字語圏国独特のテーマにもなりますが、、。)

ではでは、いきなり久しぶりなエントリーで超長文の上、全然面白くもない内容で申し訳ありませんが、金額だけ見て反応的になるのではなくって、ちょっと違った視点から考察頂くきっかけになれば良いなという感じのエントリーでしたー。

あ、言っておきますが私は一切関わってませんし、知り合いがやったとかでもなく、ステマでもないし完璧な第三者です。民主党がどうとか自民党がどうとかという事でもありません。単に製作者からの視点、という事で言いたい事を言ってるだけですのであしからず的な。

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